地方巡察21章へのご感想

地方巡察21章にご感想をいただきました。

ありがとうございます。続きは作者からのお返事です。

 

21章は、ジェレフがパシュムを旅立つシーンでした。川船の港から始まります。 

 

途中まで、(ああ、これも旅人の物語なんだなあ……まるで『月下世界紀行』の一編のよう……)と、しみじみ、しんみりしながら読んでて、町長登場のところで、心のなかでギャーっと悲鳴をあげてしまいました。ここまで来て、こんな大騒動が起こるとは。お嬢さん……なんということでしょう!!!(怒)(泣) しかし、町長、衆目監視の中で王都の要人にあの態度とは、どこまでたかをくくっているのでしょうか。さすがに衆目監視の中でいまさら殺すわけにはいかないジェレフが、帰ってから然るべき筋に報告して自分が不味い立場になるかもしれないとか思わないのでしょうか。小さな町で長年絶対権力を握ってきために、そこまで感覚がおかしくなってしまっているのでしょうか。それとも、ここでは地方豪族の権力がそこまで治外法権的に強いのでしょうか。アイシャも、ささやかな望みはいじらしいけれど、町長が選んだ嫁ぎ先(お嬢さんが行く予定だった家ですよね)では幸せになれるとは思えなくて……。ハラル先生も、このままでは、後で困ったことになりそうですね。ああ~もどかしいです! そんな中、ハラル先生との友情や奥さんの刺繍布が美しくきらめいて見えました。

 

川船の港のシーンは、私も拙作「月下世界紀行」の「河を渡る」を思い出して、なんだか懐かしくなりました。あちらは、若い恋人たちが恋愛を成就させる物語で、それを旅先で傍観する旅人が主人公なのですが、「地方巡察」では、誰も恋愛が成就しなくてですね……ジェレフも、実は傍観する旅人の立場だったんだなあ、って思いながら書いていました。パシュムを通り過ぎるだけの傍観者だったんですね。なんだか切ないです。

そうやって、しんみりした所に、町長が登場して、一気に昭和のTV時代劇みたいになりました。

作中なんだか、解説する隙間がなくて、そのままになってしまいましたが、町長は、街の噂でジェレフが実は生きていて、パシュムを発つ事を知り、口封じに再び殺害を企てて港にやってきたのでした。それ、もっとちゃんと書いておいたほうが良かったかなあと、後からモヤモヤしています。改稿しましょうか……?

アイシャが後から港にやってきたのも、ジェレフが生きていて、町長に殺されてしまうと思ったので、とりあえず、いてもたってもいられず走ってきたという次第で、当初は町長の命乞いをしにきたわけではなかったのでした。

アンジュールは、ジェレフを殺して埋めて、もしバレても、骨になってからなら死因は分からないだろう、野盗に襲われて死んだので、丁重に葬っておいたとでも言っときゃいいだろうぐらいに軽く思ってたと想定しています。本当にそれでバレないのかは謎なんですが。時代背景的に、どこまで検死できるのか、作者も考えたことがありません。

パシュムの町民の口封じについては、アンジュールは自信があったと思います。過去に起きた様々な出来事が、口封じで済んだ経緯があったのではないでしょうか。

そのような背景はともあれ、ここはジェレフ先生のチャンバラを楽しむ場面でした。でも、実際に書いてみたら一瞬でした(^_^;)

シェラルネお嬢さんはあんなことになってしまうし、アイシャともお別れだし、ジェレフも精神的にボロボロになって川を下っていきました。そんな、物も言わないぐらい凹んでいる血まみれの客(ジェレフ)に乗ってこられた川船の船長さんは気の毒でした。ヤギや鶏に囲まれて、メエメエメエメエ言われながらの川下りだったでしょうか。それはそれで慰めですけどね。

 

次章、22、23で巻き返せなければ、ものすごく後味の悪い話になってしまうので、書きながら私も「なんやこれー!!」と心で絶叫でした。この話は後味がスッキリではなさそうだぞ、というのは、ご感想でも、読者様がたは予測してくださっていたみたいなんですが、……それにしてもです!!

完結編にご期待ください。